[:ja]その保存食、食べきれますか[:]
[:ja]
梅の実には人を魅了する魔力があるのか・・
都会に住んでいた頃、梅の季節になると毎年のように梅仕事に励んでいました。
梅干しに始まり、梅酒、梅シロップ、梅醤油などなど、
今にして思えば
仕事に追われて日々の料理も十分時間をとって向き合えない後ろめたさを
「季節の手しごと」をこなすことで
「丁寧な生活」をしている自分になりたかったのかも知れません。
梅は無農薬のものを取り寄せたし
塩はもちろん自然塩。
保存瓶だってこだわらなくちゃ!
おしゃれなデザインのものを夜な夜なネットで調べて
パントリーにあふれるほど買いました。
ジャムやはちみつの空き瓶も、もったいないので全部保存。
棚は空き瓶だらけ。
ライフスタイル雑誌によく出てくる、
「いろんな保存食が詰まった瓶がずらりと並んでいる光景」に憧れていたんですよね。
梅の実を一つ一つ処理したり、
できあがる時間をじっくり待ったり、
そういう静かな時間は好きだったので楽しかったのですが・・
さて、できあがった梅酒や梅シロップ、梅干し。
不思議と全然減らない。
愛着があって手をつけられない、とは違うんです。
そういえば減らないなー、なんて、人ごとのように思っていたのですが
そういえば私、お酒苦手なんだった・・
甘い飲み物も好きじゃないんだった・・
飲まないんだったら作る意味なくない?
すごいアホな話なんですけど、これにようやく気づいたのは割と最近のことです。遅っ!!
それまでは毎年、義務のように儀式のように梅の保存食を仕込んでいました。
減らないのに。飲まないのに。
でもこの季節になるとブログやインスタグラムにあふれる
おしゃれな梅仕事の写真。
そういえば、2年前にもこんな記事書いてました。
梅干し、シロップ、ピクルス。今年の梅仕事まとめ|曲げわっぱな日々
久々に読み返してみたら、
案の定インスタグラムに影響されて、きび砂糖で水玉の梅シロップを仕込んでいました(笑
どれだけ影響されやすいのだろうか・・、ああ恥ずかしい。
とまあ、梅仕事も一通りやると飽きた、というか、
私の町は梅の産地で、美味しい梅干しを作る名人もたくさんいるんですよ。
じゃあ無理に作らなくっても名人の梅干し買えば良いじゃんー、なんて思ったりして。
ああ、梅の季節が来たんだな。じゃあ作らなきゃ。飲まないけど。
その妙なループからようやく脱却できたのは、先日うちの古民家を大掃除しているときでした。
シンクの奥や棚の隅から、大量の梅酒や梅干しが出てくる出てくる。それも一升瓶で。
古く薄暗い台所で、ほこりまみれの瓶がずらりと並ぶのを見たとき、自分自身が作ってきた飲まない梅酒の瓶がオーバーラップして見えました。
そして憑き物が落ちたような気分になった。
私の父などは面白がりなので
「ウン年ものの梅酒、濃厚で旨いかもしれんぞ」なんて言うのですが、
ちゃんと管理されてない、しかも素人が作った古い食品を口に入れるのは嫌。たとえ身内が作ったものであっても。
というわけで、これを作った曽祖母や祖父母には申し訳ないですが、全部処分。
ほんとうにたくさんあるので他の掃除のついでに少しずつ処分しているのですが
あれですね、やっぱり食べ物を捨てるのってすごくダメージがありますね・・
絶対に食べられないと分かっているものでもツラい。
心を無にして手だけ動かしても消耗する。
この一連の流れ、ほんとうに無駄ですよね。
大事な時間と食材を使って保存食を仕込んで、食べないのにスペースだけ食って。
忘れた頃に辛い気持ちになりながら処分する。
ムダ、ムダすぎる・・
こんな経験をしたものですから、
その後の保存食作りはものすごく慎重になりました。
ちなみに、いま冷蔵庫にある自家製保存食はこれだけです。
たくさんあるように見えますが、季節ごとのジャム作りも止めたし、味噌作りもしてないし、ほんとうにこれだけ。
一年かけてこれを食べきることに集中します。
食べきれる量の見極め。活用レシピの準備。
大瓶で作ったら、すぐに使う分だけ小瓶に移して手の届きやすいところに置く。
この辺はまた別の記事にしますが、
とにかく「たくさん作ってとにかく保存」からは脱却しないとな、と思っています。
作ったら食べきるまでが料理。そうですよね?
古民家にまだまだ残っている梅酒の瓶。
感謝を込めて一度くらいは、小指の先くらいは味見してみようかな・・なんて。[:]